枕草子 第百二段「二月つごもりころに」 |
解答と解説【基本学習 と 発展的学習問一〜三】 |
【基本学習】 |
(登場人物・場面展開・心理)
問一 二人いる。
@主殿司・・・藤原公任の使者
A「左兵衛督の中将におはせし」人・・・殿上間(てんじょうのま)にいた人々の、清少納言の返事に対する批評を、清少納言自身に伝えた人。
問二 藤原公任。
問四 @中宮定子。清少納言が仕えていた人。
人物説明
A藤原公任からの歌の返事をどうするかということ。
B中宮定子の所に一条天皇がやって来て、休んでいらっしゃるから。
問五 「げに遅うさへあらむは、いと取りどころなければ」=なるほど(たいした返事もできない上に)遅くさえあったらまったく取りえがないので。
問六 @「わななくわななく書きて取らせて、いかに思ふらむとわびし」
=書くときから批評がこわくてぶるぶる震え、渡したあとも、読んだ人がどう思うか不安で心が痛んでいる気持ち。
A二つの気持ちの間で揺れていた。
○「これがことを聞かばやと思ふ」=歌の批評を聞きたいと思う気持ち。
○「そしられたらば聞かじ」=非難されたのなら聞きたくないと思う気持ち。
問七 みんな感動し、俊賢の宰相などは「内侍」に推薦しようと決めた。
|
(基本的文法・基本的古典語句)
[条件法]
問九 @言えば=順接確定条件。「已然形+ば」。言うので(因果関係)。
A寄りたるに=順接確定条件。たる(助動詞・連体形)+に(接続助詞) B見れば=順接確定条件。「已然形+ば」。見ると(偶然関係)。
C問へば=順接確定条件。「已然形+ば」。問うと(偶然関係)。
D苦しきを=順接確定条件。形容詞・連体形+を(接続助詞)。苦しいので。
Eすれど=逆接確定条件。「已然形+ど」。
Fとりどころなければ=順接確定条件。なけれ(形容詞已然形)+ば。取り柄がないので(因果関係)。
G思ふに=逆接確定条件。「已然形+接続助詞」。思うけれども。
Hそしられたらば=順接仮定条件。たら(助動詞・未然形)+ば。非難されたならば。
Iおぼゆるを=順接確定条件。おぼゆる(動詞・連体形)+を(接続助詞)。感じていると。
|
条件法の基本 |
|
【重要古典語】
問十 @いみじう=たいそう(形容詞・シク活用)。
この「いみじう」の用法は重要。「程度がはなはだしい」時に用いる。 a)下に用言を伴う場合(連用形で用いる=いみじく・いみじう) =「たいそう」(副詞的な用法となる)
b)単独で用いる場合
T)良い場合 =たいそうすばらしい。たいそうりっぱだ。
U)悪い場合 =たいそう恐ろしい・たいそう気味悪い・
たいそう嫌だ・たいそうかわいそうで見ていられない
※前後の場面からふさわしい語句を選ぶことが大切。
Aとて=と言って。「とて」(格助詞+接続助詞)には三つ用法がある。 a)と 言ひ て(と言って)
b)と 思ひ て(と思って)
c)と し て(として)
Bげに=ほんとうに・実に(副詞)。 Cけしき=気色。ようす・けはい(名詞)。※「景色」とは異なる。 Dはづかしき中=こちらが恥ずかしくなるほど立派だ。(形容詞・シク活用・連体形)。 → 語句説明 Eいらへ=答え(名詞)。動詞「いらふ」(ハ行下二段活用)が重要。 Fわびし=心が痛む・つらい(形容詞・シク活用・終止形)。 Gなほ=やはり(副詞)。 「そうはいってもやはり」の意味。 |
【係助詞】
問十一 @こそ→ すれ(動詞・サ変・已然形)
Aなむ→ し(助動詞・過去・連体形)
Bぞ→ (かたりたまひ)し(助動詞・過去・連体形)
Cか→結びは省略。「おはする」(サ変・連体形)などが省略されている。
|
【発展的学習】 |
【陳述の副詞】(疑問・反語は、連体形と呼応する)
問一 @いかでか(疑問)→ つくべからむ(付けたらよいだろうか)。「む」は推量・連体形。
Aいかでか(反語)→ 言ひいでむ(返事ができようか、いやできはしない)。「む」は可能・連体形。
Bいかに(疑問)→ 思ふらむ(思っているであろうか)。「らむ」は現在の推量・連体形。
|
敬 語 | (ア)敬語の種 | (イ)誰から | (ウ)誰へ | (エ)敬意のない語 |
@ さぶらふ | 謙 譲 | 主殿司 | 作者清少納言 | をり |
A ご覧 ぜ | 尊 敬 | 清少納言 | 中宮定子 | 見る |
B おはしまし | 尊 敬 | 清少納言 | 一条天皇 | をりor来(く) |
C おほとのごも り | 尊 敬 |
清少納言 |
一条天皇 |
寝(ぬ)or 寝ぬ(いぬ) |
D おは せ | 尊 敬 | 清少納言 | 左兵衛督 | をり |
E たま ひ | 尊 敬 | 清少納言 | 左兵衛督 |
註(1)
「おはします」「おはす」「います」について、
清少納言は、地の文において、次のように使い分けをしている。
@おはします=天皇・中宮・選子斎院・東三条院・道隆・貴子(中宮の母)・淑景舎などに用い、皇族や関白などを中心に高い敬意を示している。 Aおはす=道隆・貴子・淑景舎をはじめ俊賢など、昇殿を許された五位以上の公家の人々に用いている。 Bいます=神に用いた一例のみ。 |
註(2)
「たまふ(給ふ)」と「せ(させ)たまふ」について、
清少納言は、地の文において、次のように使い分けをしている。 @「せ(させ)たまふ」だけ用いる=天皇・中宮・選子斎院・東三条院・道長などに用い、皇族や関白などを中心に最高の敬意を示す。 A「せ(させ)たまふ」と「たまふ」との混用=道隆・淑景舎など。 B「たまふ」だけ用いる=それ以下の人たちに用いる。 |
註(3)
「ご覧ず」と「見たまふ」について、
清少納言は、地の文において、次のように使い分けをしている。
@「ご覧ず」=天皇・中宮・道隆など限られた人にだけ用いている。 A「見たまふ」=それ以下の人々に広く用いている。 |
問三 次の語句について、(ア)文法的に説明し、(イ)どのような意味になるか説明せよ。
@「聞かばや」=聞か(動詞・カ行四段・未然形) + ばや(終助詞・希望)
=聞きたい。
A「聞かじ」=聞か(動詞・カ行四段・未然形) +じ(助動詞・意志・終止形)
=聞きたくない。
|