第三章  「こころ」をめぐって
第一節     構成について
 
1)         「こころ」の内容    
                          (坂本浩「夏目漱石 ・・ 作品の深層世界」より)
 


 
 
 
 生
 と
 私
 

 

(1) 先生の魅力
( 一 〜 七 )

 出会い・墓地・愛と拒否・孤独
 

(2) 恋 と 罪

( 八 〜 二十)
 

 子供なし・愛妻・社会よりの逃避・恋は罪・人間不信・近代的孤独・

 妻の疑惑

(3) 病 と 死
(二十一〜三十六)

 死病・父の病・自殺・遺産・人間憎悪・
 信頼

 
 
 
 親
 と
 私



(1) 崩御と殉死

( 一 〜 十八 )
 



 明治天皇崩御・危篤の父・乃木大将の殉死・父の心境・先生の遺書

 






 


 
 生
 と
 遺
 書

 
 
 










 

(1) 物欲と欺瞞
( 一 〜 九 )

 倫理的教訓・結婚問題・伯父の欺瞞
 

(2) 宗教的な愛
( 十 〜 十八)

 下宿・厭世・宗教的愛・信用と猜疑・
 純粋な愛

(3) 運命の変化
(十九 〜二十五)

 Kの出現・精進苦学・勘当・「私」(先生)
の責任感・Kの人間性

(4) Kへの嫉妬
(二十六〜三十四)

 房州の旅・Kの長所・求道と人間性・「私」の嫉妬

(5) 先生の焦燥
(三十五〜四十四)

 Kの自白・心の不可解さ・Kの矛盾・「私」の復讐・卑劣な騙し打ち

(6) 敗北と懺悔

(四十五〜 五十)
 

 結婚の申込・謝罪の気持ち・狡猾な「私」・「私」の敗北・Kの自殺・

 運命の恐ろしさ・懺悔

(7) 原罪と贖罪

(五十一〜五十六)




 

 告白への誘い・運命の悪戯・消えぬ過去・妻への思いやり・癒えぬ寂莫

 ・罪滅ぼしの深切・人間の罪・自責の念・二筋の運命・殉死・自殺・

 自叙伝の意義
 
 
(2)      「こころ」の構図
 
 
書かれなかった短編(作品整合性の問題) (三好行雄「鑑賞日本現代文学5」角川盾T9など)
 
 「先生と遺書」の強烈な印象とともに結構を閉じる現行の形が、それなりの完結性を備えているのは確かである。しかし、作品の細部にこだわると、小説として片をつけるべくして、収束を放棄した部分も多い。
@ 私が列車に乗ったままになっている。思い出を語っている話者の現在に回帰していない。 
A 私と両親(家族)とのその後の関係はどうなったか。 
B 事件後「若々しい書生」であった私は、今
どのように変わっているのか。
                                                                             → 第四節 E先生が私に託したもの 参照
      
 
(3)             「こころ」の構造
  三つの同心円から成り立っているとも考えられる。
  
 @最も外側の円  
                私(語り手)の外的観察
 
 A二番目の円   
       主人公の言葉のよる断片的 な暗示
 
 B一番内側の円  
                主人公の遺書

  登場人物の年齢表ついて