[U]育成地で育てる工夫
 
 
@温度管理
 
春:冬の間室内で管理していたカトレヤを、最低温度が10℃を超える頃(八重桜が咲く4月中旬)には外に吊します。遅くとも5月初め(ゴールデンウイークの頃)にはすべて外に吊します。50%の遮光ネットを掛け50p下に鉢をつるします。私は市販の物干し2台を利用しています。二つの竿に遮光ネットを掛け渡し、竿に針金で作ったつり金具を吊し、鉢をつるしていきます。下の床から50pは離した方が風通しがよくなり、照り返しもありません。
 
置き場所は春のままですが、8月は暑い日が続きますので、対策が必要です。
 昼間30℃以上の日が多く、しかも雨が少ないので、早朝、鉢内に水をやり、さらに床(地面)にしっかりと水を撒きます。つるした鉢の下に池や水槽があれば最高です。高温はどうしょうもないのですが、湿度を少しでも高めたいものです。私は下に日陰に強い植物の鉢や水草の鉢を並べています。
 夜間が問題です。特に有名な瀬戸の夕凪や朝凪のため、市街地には夜間そよとも風が吹きません。風のない熱帯夜が連日続きます。そのうえ場所が狭く詰めてつるしているので蒸れやすい状況です。しかし、カトレヤはCAM植物ですから、夜の活動にふさわしい環境にすることが必要です。 CAM植物
 そこで、私はまず、夕方、鉢の上から雨のように水をかけ、葉を冷やします。さらにその下の床(地面)や周辺の壁に、朝以上にしっかり水を撒きます。そして夜間扇風機で鉢の下めがけて風を送っています。使い古しの扇風機を修理して、雨風の対策をして、夜間回しています。これで周囲の気温が少し下がり、鉢の中にも風が舞います。効果はかなりあります。私にとっては、夏越しこそ最も大変なことなのです。
 
まず台風対策が必要です。また、9月下旬になると最低温度が15℃を切るようになりますが、加温設備がある場合でもすぐには入れず、外で寒さに当てて耐寒性をつけてやります。10月になると、冷たい長雨が続くことがありますので、上にビニールなどで覆いをします。長雨は、自生地の霧とは性質が違いますので病気が発生しやすく、雨よけは必要です。
 中旬には10℃くらいになるので、室内に取り込みます。しかし、昼間の窓辺は高温になるので、薄いレース状のカーテンをして、早朝は冷たくても朝から通風をはかっておくことが大切です。夜には窓を閉めます。
 なお、耐寒性の強い種類のカトレヤ(ソフロニティス系やミニカトレヤなど)は、
11月に最低温度が5〜6℃にさがってくるまで外に置いておきます。もちろん雨には当てないようにします。デンドロビューム(ノビル系)とほぼ同じ頃に室内に取り入れます。
 
カトレヤは種類にもよりますが、一般の秋・冬咲き大型カトレヤなら、やはり最低10℃は確保したい。耐寒性のあるカトレヤ系でも7℃はほしい。それ以下が続くと体力がなくなり凍死してしまいます。春咲き種のように冬花芽を維持する株は15℃は必要です。もちろん15℃あれば、すべてのカトレヤが楽に冬を越せます。
 10℃を確保するには、暖房のある部屋の南向きの窓辺を占拠するか、室内用ワーディアンケースか観賞魚用大型水槽が必要になります。暖房のある部屋
なら十分温度は確保できるのですが、部屋の中は光線が不足したり、湿度が不足しがちです。窓辺に置くとよいのですが、夜中に暖房を切ると早朝の窓辺は7℃以下に下がります。
 そこで、昼間は窓辺の薄いレース状のカーテン越しに置き、就寝時に暖房を切るときは、部屋の真ん中に移動し、夜明け前の冷え込みを防がねばなりません。夜間は専用の発泡スチロールなどの保温用ケースに入れることもよいでしょう。あとで述べますが、冬は休眠期なので、室内の場合はほとんど水を与えません。
 ケースや水槽をテラリュウーム代わりに活用して加温する場合は、高温になりやすいので必ずサーモスタットを付けて、また漏電のないよう管理しなければ危険です。
 冬は徹底したこまめな作業が要求されますが、その作業がまた趣味家の楽しみでもあるのです。秋~冬に咲くカトレヤが最も多いのです。さらに花後の管理もなおざりにはできません。
 こうして、春の訪れを待つのです。
 
A植え込み材料(コンポスト)
 
 
生蘭であるカトレヤの根は、通気性が高くなければなりません。自生地の条件から、根が直接空気に触れるような材料が必要です。また、ほとんどを釣り鉢にするので、軽い材料でなければなりません。カトレヤ栽培には、一般に次のような材料が用いられます。
  
                          
A 水苔                
B 椰子の実チップ         
C ヘゴ板 
           
D コルク板         
保水性





×

×
排水性

×





通気性







非腐敗性

×





 
のうち、最も多く用いられるのが、A「水苔」。欠点は排水性のなさ腐りやすいこと。逆に言えば、水やりは少なくなるので手が省けます。 
 B「椰子の実チップ」は、あく抜きしたものが市販され、扱いやすくなっていますが、材料が粗いため小苗には向かないようです。
 C「ヘゴ」板とD「コルク」板は、根が外気に直接触れるので、通気性では自生地の条件に近くはなるのですが、水やりの回数を多くしなければならないのが欠点です。また、植え替えが大変面倒なことも欠点でしょう。
 私は、やはり「水苔」中心ですが、ブラジル系の一部やミニカトレヤなどはコルク板に付け、大鉢には椰子の実チップを用いています。
 水苔と椰子の実チップとの混合を試したこともありますが、デンドロでは良かったのですが、カトレヤでは今ひとつうまく行きません。混合する割合の問題かもしれません。今後の課題です。軽石との混合は、値段と扱い方の点で難があるようです。                               植え方の図 参照
 
 
B季節による水やり
 
 
やり3年」という言葉がありますが、カトレヤの場合、自生地に合わせて、一年を雨期と乾期に分けて水やりを工夫しなければなりませんので、慣れるまでは、戸惑います。
    
  (1)雨期(3〜9月)の水や
 
月はまだ室内にありますが、気温が上がってきているので、根が動き始めます。水やりの回数を増やしていきます。水やりは夜です。15℃が確保できるなら、植え替えなどを始めていきます。4月に外に出したら、表面が乾いたら与えるようにし、雨にもそのままあてます。5月からは雨期本番になりますので毎夜水を十分に与えます。西日本は梅雨にも気温が高いのでそのままで大丈夫です。雨や水やりのたびに新芽が驚くほど成長していきますので、毎朝が楽しくなります。 
 梅雨が明けたら、早朝と夜に水を与えます。早朝は植物自体よりも、その周囲や床面に水を流します。夜は大灌水です。カトレヤの頭から水をかけ、床面や周囲にも水を撒きます。8月の猛暑には特に時間をかけて灌水します。              →温度管理 の項参照
 最高温度が30℃を切るようになる9月中旬からは夜だけの水やりにし、それも表面が乾いた鉢のみ与えるようにします。いよいよ雨期も終わりです。
 
(2)乾期(10〜2月)の水やり
 
10月になって室内に取り込んでからは、乾いたら一日待って、朝の灌水に切り替えます。低温で夜濡れていると病気にかかりやすくなるようです。夕方には表面が乾いているほうが良いようです。
11月からは、10℃を保てる場合は、一週間に一度を目安に灌水し、10℃を保てない場合は、まったく水をやらないほうが良い。完全に休眠させるのです。逆に、加温設備があって、15℃を保てる場合は、鉢の表面が乾いたら一日待って、水やりを続けます。自生地は休眠期の乾期といえども、霧が発生し、湿度はかなりあるからです。温室などの場合は、むしろ乾燥しすぎることがありますので、周囲に散水し湿度を高めることが必要です。
月下旬になると昼間はかなり温度が上がるので、冬中水を与えなかった鉢にも朝の灌水を始めます。
月にはいったら、本来の成長リズムにもどして、夜の灌水に切り替えます。いよいよ乾期が終わり、雨期の到来です。
 
C  肥    料
 
  雨期(成長期)と乾期(休眠期)とでは、肥料の施し方は全く異なります。
[1]雨期(3〜9月
 ア)3月
 まだ室内のため、置肥は与えず、小苗や夏咲き種だけ液肥(窒素系中心)を与えます。冬咲き種は、休眠期。
 イ)4〜7月                              
 最も成長する時期なので、有機肥料の置肥を月に一度施すとともに、1〜2週間に一度は液肥を与えます。どちらも窒素分(N)の多いものになります。 
                                          置肥の与え方
ウ)8月
 暑さのため肥料が腐敗しやすいので、置き肥は与えず、液肥だけそれも規定値よりもできるだけ薄くして与えます。(規定より50%くらい薄く)
 エ)9月
 夏咲いたものはすでに休眠期なので、肥料はまったく与えない。
 秋咲きのものには、リン酸・カリを与えます。窒素系肥料は与えません。
 冬咲き・春咲きのものと小苗とには、置肥と液肥(窒素を含んだもの)を与え新芽を大きくします。
 
[2]乾期(10月〜2月)
 休眠期なので、無加温の場合は、全く肥料を与えません。加温設備のある場合は、11月まで液肥を与えます。シースのある鉢にはリン酸・カリを与え、小苗には、窒素分を含めます。12~2月は肥料はまったく与えません。