カトレヤは「らんの女王」などと呼ばれているため、何か高価で私たち庶民には手の届かないもののように考えがちです。わたしもそのように考えていました。確かに、お店にはカトレアは少なく、花付きの鉢は高価です。
しかし、実際に栽培してみると、カトレヤは、他の洋蘭、たとえばシンビジュウムとか胡蝶蘭(ファレノプシス)とかパフィオなどよりも栽培しやすく、繁殖も容易です。では、なぜお店に安いカトレヤがたくさん並ばないのでしょう。
理由はいろいろあると思いますが、一番の理由は、切り花にできないということでしょう。一般に大きな花は、茎(花梗かこう;ステム)が短く、6〜8号の大型鉢のままで観賞するしかありません。また、花数も2〜4くらいが普通で、花保ちも2〜3週間で他の洋蘭よりも比較的短い。さらに、大型になるほど生育年月が長く、小苗から開花まで5〜6年もかかります。結局は商業ベースに乗らないからでしょう。
ところが、趣味で栽培する場合は、安い苗を買って、ゆっくりと容易に栽培し、お店にない豪華な花を咲かせ、近所や友人にちょっと自慢できる。それがカトレヤなのです。
現在、日本で多く見られる、色とりどりの豪華なカトレヤの多くは交配種です。それも、カトレヤ属内だけでなく、近縁のレリヤ属・ブラサボラ属をはじめ、ソフロニティス属やエピデンドラム属などとの属間交配によって、人の手で作り出されたものです。バイオテクノロジーにより、自然界ではけっしてあり得ない属が多数作り出されているのです。そのことの是非は別にして、お陰で、趣味家は素晴らしい花色のカトレヤの苗を通販で手に入れことができるのです。その栽培方法はPart3に譲って、まず、そもそもカトレヤの原種はどんなところで育っていたのでしょう。
自生地地図 カトレヤの形態と各部分の名称 着生蘭の自生概念図 |