「大人になれなかった弟たちに・・・」(米倉斉加年) |
問一 「母は自分が食べないので、お乳がでなくなりました。」とありますが、なぜお母さんは食べないのでしょうか。
子どもたちにまず食べさせようと思って、自分の分を回したから。
問二 「大切な食べ物でした・・・」の「・・・」は、どんな働きをしていますか。
「そうなんですよ。それなのに」という、心に深くとどめる働き。ここでは、心の痛みを強く伴っている。
問三 @「何回も・・・」
A「〜のですが、・・・それなのに」 の「・・・」は、どんな働きをしていますか。
@「やったんです」
A「そのかわいい弟にとって、大切な食べ物だとわかっていたのに」
@Aともに、確認しながら深く反省し、心の痛みを表している。
問四 「空襲がひどくなってきたので、母は疎開しようと言いだしました。」とありますが、母は、
@なぜそう言いだしたのでしょうか。 また、Aどこへ行けば空襲はないのでしょうか。
@子どもたちの安全のために、空襲からのがれるため。
A都市から離れ、農村に行けば空襲はないと考えられていた。
問五 「しんせきの人」はなぜすぐに「うちに食べ物はない」と言ったのでしょうか。
当時、都会の人が食べ物を求めて大勢農村にやってきていたため、「しんせきの人」も「僕たち」をそれと同じに考えてしまったのであろう。
戦争によって人々の心が切りさかれていたことをも示している。
問六 母の @「強い顔」 A「悲しい悲しい顔」には、それぞれどんな思いがありますか。
@=自分一人で子どもたちを守るしかないという決意。
A=だれにも頼ることができない、ひとりぽっちだという気持ち。
問七 「くるりと後ろを向いて帰りました。」には、母のどんな思いがあったのでしょうか。
○心ない言葉による深い悲しみ と
○一人でがんばるしかないという決意。
問八 そのような母の顔を、なぜ「美しい顔」と言ったのでしょうか。
いっしょうけんめいに人生を生き抜こうとする真剣な顔だから。
問九 この村を「桃源郷」と呼んだのは、なぜですか。
ただ美しいというだけではなく、「あゆ」の泳ぐ川もあるので、食べ物が豊かであるにちがいないと考えたから。
問十 「着物はなくなりました。」とあるのは、どうしてですか。
食糧と交換したためになくなっていった。(いわゆる、タケノコ生活)
問十一 「暗い電球の下では」とは、どういうことですか。
敵の目標にならないため、燈火管制がしかれていた。
問十二 「小さな小さな口に綿にふくませた水を飲ませた」とは、どういうことですか。
人の死にぎわに、その人の口に水をふくませること。「末期(まつご)の水」とか「死に水」とかいう。仏教の習慣。
問十三 弟は死にました。病名はありません。栄養失調です・・・」の
「・・・」には、どんな気持ちが込められていますか。
栄養失調は食糧不足からくるもので、単なる病名ではない。栄養失調は戦争や飢饉など、多くは世の中が不安定な時に起きる。天災ではなく、人災といえる。ここでは、そういう怒りの気持ちが込められている。
問十四 「白い乾いた一本道」とは、どういうことですか。
うるおいのない、むなしい気持ちで歩いていること。このような描写を「心象(しんしょう)風景」と呼ぶ。
問十五 病院から村までバスがあったのに、なぜ歩いたのですか。
死んだ子供を抱いてバスに乗ると、他の乗客が嫌な気持ちになると思ったから。
問十六 B29の機体を見ても逃げ出さないで、「美しい」と表現しているのはなぜですか。
@人の少ない村には爆撃はないので、あわてないこと。
A大事な弟をなくし、むなしくうつろな気持ちが、恐怖や敵対意識などの感情を消していたから。
問十七 「ヒロユキは幸せだった。」と言う母の気持ちを述べなさい。
何か口実をもうけて自分に言い聞かせないと、つらい気持ちによって押しつぶされてしまうから。
問十八 「大きくなっていたんだね。」という母の気持ちを述べなさい。
栄養失調のため人並みには成長できなかったが、小さいながらもけんめいに生きようとしていた姿に改めて気づき、悲しみがこみ上げてきた気持ち。(わが子をふびんに思う母の悲しみ)
問十九 「そのとき、母は初めて泣きました。」とありますが、なぜそのときまでは泣かず、そのときになって泣いたのでしょうか。
「母」は、すべて自分で処理しなければならないし、「僕」もいるので弱さを示したくなかった。「母」は常に気持ちを張りつめていて、泣く余裕はなかったのである。ところが、わが子を棺に納め、その子が必死で「生きよう」としていた姿に気づき、心の緊張が急に解けてしまったから。
問二十 「ヒロシマ」「ナガサキ」のことがわざわざ書かれているのは、なぜですか。
死んだのは「弟」だけでなく、そのほかにも数多くの子供たちが戦争のために死んでいったことを表そうとしている。社会全体の問題であったことを示そうとしている。ここには、戦争のむごさに対する激しい怒りが読みとれる。
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