行 動 |
「わたし」の心理 (本文抜き出し) |
心 理 の 説 明 |
@バスから降り てすぐたけのこ とを聞く。 |
○「越野たけという人をしりませんか。」 わたしはバスから降りてその辺を歩いている人をつかまえすぐに聞いた。、 ○わたしは懸命である。 |
「わたし」の早く会いたいという気持ち |
Aたけの家を見 付ける。 |
○ 東京のわたしの草屋よりも十倍もりっぱだ。 |
たけを崇める気持ち |
Bたけの家が留 守なのを知る。 |
○わたしは途方に暮れて、汗をぬぐった。 ○こいつあ、だめだ。 ○僕はばかであった。 ○ため息をついてその家を離れた。、 |
焦燥感 の入り混じった心境 絶望感 |
Cたばこ屋でた けの行き先を尋 ねる。 |
○少し歩いて→たばこ屋に入り→ 尋ねた。 |
絶望の中から最後の望みをかける |
D運動会に行っ たことを知る。 |
○わたしは勢い込んで・・・ ○「そうですか、ありがとう。」 |
望みが急にふくらみ 気持ちがたかぶってくる |
E運動会場に到着する。 |
1)○呆然とした。 |
思いも寄らぬお祭り騒ぎに驚きあきれる |
2)○夢見るような気持ち。 |
戦争の真最中の豪勢さにうっとりとする |
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3)○悲しいほど美しくにぎやかな祭礼 |
その感動が最高潮に達した時の気持ち |
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4)○日本はありがたい国だとつくづく思った。 確かに日いづる国だと思った。 |
日本を偉大な国家として誇示する気持ち |
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5)○古代の神々の豪放な笑いと闊達な舞踏 |
素朴さに日本の古代へと思いをはせる |
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6)○海を越え山を越え、母を捜して三千里歩い て、行き着いた国の果ての砂丘の上に、華麗な お神楽が催されていたおいうようなおとぎ話の 主人公にわたしはなったような気がした。 |
自分をクオレの物語の主人公に結び付け て陶酔している [空想の世界にロマンを求める気持ち] |
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F運動会場の周 辺を歩き回る。 |
1)○わたしの育ての親を捜し出さなければなら ぬ。 |
自分の使命を思い起こす |
2)○べそをかいた。 ○どうにも手の下しようがないのである。 ○うろうろ歩くばかりである。 |
焦燥感と心細い気持ちの交錯 |
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G何人かの人に たけの所在を聞 いて回る。 |
1)○勇気を出して一人の青年に尋ねた。 |
とにかく捜さねばという「使命感」 |
2)○青年にきざったらしく打ち明け話をするわ けにもいかぬ。 |
「羞恥心」 |
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3)○ぬっと顔を突き入れ、・・・・ ○まるで何かに憑かれたみたいに・・・尋ね歩いて・・・ |
「焦燥感」 |
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4)○わからなかった。 |
不安感 |
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H腰を下ろして 運動会を眺める |
1)○にぎわいをぼんやり眺めた。 |
途方にくれる (異質な自分からくる孤独感もある) |
2)○子どもたちに食べさせているのであろう。 |
はがゆさ |
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3)○そんな暴力的な手段はなんとしてもイヤだった。 ○無理に自分の喜びをでっち上げるのはイヤだった。 |
他人に迷惑をかけてまで無理して自分の喜びを 作り出すことの恥ずかしさ |
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Iジャンパーを 着て立ち上がる |
○ 縁がないのだ。神様が会うなとおっしゃっているのだ。帰ろう。 |
事態の責任を他者のせいにして、絶望感 や不安感を納得しようとする。縁のないことを悟る。 |
J村へ出てバス の発着所へ歩い てゆく。 |
1)○もう四時間〜たけの帰宅を待っていたって いいじゃないか。 |
どうしても会いたい気持ち |
2)○わたしは今のこの気持ちのままでたけに会いたいのだ。 |
「再会」という感動を純粋な気持ちで取って置きた い気持ち |
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3)縁がないのだ。 |
自分を納得させようとする気持ち |
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4)○わたしのこれまでの要領の悪かった生涯にふさわしいできごとかもしれない。 |
自己の人生を自虐的に反省 |
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5)○有頂天で立てた計画は〜必ずちぐはぐな結果。 ○具合の悪い宿命があるのだ。 |
宿命感による諦め(多分に自虐的) |
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K帰る決意をす る。 |
1)○おまえは、女の子か。 |
自己卑下 |
2)○それだからおまえはだめだというのだ。 |
自虐・自己否定 |
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3)○おまえはきょうだい中でも一人違って・・だらしなく汚らしくいやしいのだろう。 |
疎外感 |
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Lバスの出発時 間を聞く。 |
○もう三十分くらい間がある。 やっぱり未練のようなものがあって・・・ |
諦め切れず、未練が残る |
M昼食を頼んで 断られる。 |
○いよいよ帰ることに決めてバス発着所のベンチ に腰を下ろし、・・・ |
未練を断ち切ろうと煩悶する |
N再度たけの留 守宅へ行く。 |
1)○もう一度たけの留守宅の前まで行って、人知れず今生のいとまごいでもしてこよう。1 |
運命に従おうとする諦念(永訣感) |
2)○苦笑しながら・・・ |
未練たらしい自分への卑屈な気持ち |
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O入口が開いて いるのを見る。 |
1)○天のたすけ!勇気百倍。 |
一気に元気になる(蘇生した感じ) |
2)○品の悪い形容でも使わなければ間に合わないほど、 |
感情を押さえられなかった自分への照れ |
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3)○勢い込んでガラス戸を押し開け、 |
気がせき込み、心がはやっている。 |
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P呼ぶと女の子 がでてくる。 |
○その子の顔によって、たけの顔をはっきり思い出した。 |
安心感 |
Q名のる。 |
1)○もはや遠慮をせず〜名のった。 |
少女と兄妹の意識を持つ。 |
2)○もうそれだけで、わたしとその少女の間に一切の他人行儀がなくなった。ありがたいものだ。 |
同胞意識(同じ親をもつ同族の意識) |
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3)○わたしはたけの子だ。女中の子だってなんだってかまわない。わたしは大声でいえる〜 わたしはこの少女ときょうだいだ。 |
同胞意識からくる「興奮」と「喜び」 ↓ |
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4)○気の毒だが、その腹いたがよかったのだ。 腹いたに感謝だ。 |
育ての親に会えるよいう高ぶった気持ち(ユーモラ スな作者特有の表現) |
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Rこの子につい ていこう。 |
1)○この子をつかまえたからには、もう安心。大丈夫たけに会える。〜離れなきゃいいのだ。 |
安心感と期待感 |
2)○「まだ痛いか」 「薬を飲んだか」 |
身内への思いやり |
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S連れていって もらう。 |
○おまえもおなかが痛いだろうが、僕だって、遠くから来たんだ。 |
一見めちゃくちゃで身勝手な論理であるが、それを 正当化するほど、たけに会いたい一途な気持ちが 込められている。 |
行 動 |
「わたし」の心理 |
「わたし」の心理の説明 |
「 た け 」 の 心 理 と そ の 説 明 |
21 たけに会い、そばに座る。 |
○笑って帽子をとる。 ○たけのそばに座る。 1なんの不満もない 2安心してしまっている 3胸中に一つも思うこと がない 4全く無憂無風の情態 5心の平和 6不思議な安堵感 7甘い放心の憩い ○親孝行は自然の情けだ。 |
真の母の持つ安らかさ「母の愛」にひたる 戦時下では親孝行 は、倫理道徳とし て教えられていた ã 既成道徳への反論 |
○うつろな眼=【「わたし」であるか、どうかすぐ には信じられなかった】 ○「あらあ。」それだけ。 笑いもしない。まじめな表情(硬直な姿勢) 【わかっていても、やはりまだ信じられない気 持ち】 ○さりげないような、あきらめたような、へんに 弱い口調 【 @一種の放心状態 A人前で取り乱さない性格からくる自制心】 ○無言・きちんと正座 【自分の喜びの感情を隠そうと努めている】 ○子供たちの走るのを熱心に見る 【心は「わたし」に会えた喜びで占められている が、どのように振る舞うべきか、迷っている。】 |
22 たけを眺める。 |
○思い出のたけと少しも変 わっていない。 (老成した人であった) ○思い出とそっくり同じにおいで座っている。 ○ほかのアバたちとは、ま るで違った気位を持ってい るように感ぜられる。 ○着物の縞柄は選択がしっ かりしている。 ○全体に、何か、強い雰囲 気 |
思い出の中のたけと同じであることを確認したうれしさ 母を誇りたい気持ち |
たけの顔を描いてみよう |
23 たけのため息を聞きつける。 |
○たけも平気ではないのだ な。 |
たけの強い感動を察知 |
○肩に波を打たせて深いため息をもらす。 【感情の高ぶりを抑えようとしている】 (「たけ」の感情の、初めての表出) ○やはり黙っていた。 【まだ感情の高ぶりを抑えようとしている】 |
24 たけとの会話 |
1)○本当に何も食べたくなかった。 |
胸がいっぱいである。 万感こみ上げてきた感情 |
○ふと気付いたようにして、「何か食べないか」 【話し出すきっかけを作るためのジェスチャー】 ↓ ○「餅のほうではないんだものな」と小声で言っ てほほえんだ。 【やっとこころが落ち着いてきた】 ○眉をひそめ、「〜たばこだの酒だのは教えね きゃのう」 【育ての親としての心が蘇ってきた】 |
2)○わたしの酒飲みをちゃんと察している不思議なものだ。 にやにやする。 |
○たけと心が通じ合っていることへの甘えた気持ち。 ○弱点をつかれたこ との照れ |
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3油断大敵の例である。 笑いを収めた。 |
たけの真剣さに心を引き締めた心理 |
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25 まじめな 顔になる。 |
○誘われて、「ああ、行こ う。」 |
すなおな心になっている。 |
○今度はたけのほうで笑い、立ち上がって龍神 様に誘う。 【 ○(反応が早いので、言い過ぎたと思う。】 ↓ 【 ○話し合う場所を配慮した。】 |
26 たけについて龍神様へ行く。 (たけが突然能弁になる) |
○わたしも何も言わず、 ぶらぶら歩いてついて行 く。 |
安心してついてゆく =幸福感にひたっている。 |
1○黙って登って行く。 【気持ちの高ぶりを抑えている。5への伏線】 2○突然ぐいと片手を伸ばして八重桜の小枝を 折り取る。 【気持ちのたかぶりをおさえるための代償行動】 3○歩きながらその枝の花をむしって 地べたに投げ捨てる。【2の心理と同じ】↓ 4○立ち止まって勢いよく向き直り、 【自己抑制が頂点に達し限界にくる】 5にわかに堰を切ったみたいに能弁になる。 【自己抑制が一気に崩れ、本音があふれてくる】 ※☆会った後の自分の気持ち ☆今までの会いたかった気持ち ☆今の気持ち・・・そんなことはどうでもいい (回想による感慨と現在への回帰) 6○小枝もへし折り、モンペをゆすり上げ、やつ ぎばやに質問を発する。 |
○たけの、そのように強く て、不遠慮な愛情の表わし 方に接し、 ○わたしは、たけに似てい るのだと思った。 |
○不器用な愛情表現の中に、むしろ暖かい愛情を感じる。 ○自分自身の中にある「ふるさと」を感じている。 |
津軽ノート3 |